著作権法

著作権法上の定義

著作権という権利を一言で表すのは大変難しいのです。それは著作権という権利が多くの権利の集合体であるためです。しかし、まず漠然とでも著作権とはどんな権利かをつかんでおく必要があると思います。著作権法の1条と2条1項から確認してみましょう。法律の条文を頻繁に持ち出すのはこのページの趣旨には沿わないのですが、ここは大事なところなので少しおつきあいをください。まず二条一項で、著作物とは何かということを説明しています。

著作権法第二条一項

著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう

  • 思想又は感情を表現したもの
  • 創作的に表現したもの
  • 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

「思想または感情」とは

判例では「思想または感情」とは「人間の精神活動全般を指す」とされています。ですから喜怒哀楽が書かれていなければならないとか、何かの思想に裏付けされていなければなないということではなく、ずっと広く扱われています。しかし逆にいえば、単なる記号のようなもの、例えば、極端な例になりますが伝票に記載されたナンバー、乗車券の券面表示、製品名を並べただけのカタログなどは、この「思想または感情を表現したもの」の中にははいりません。

「創作的に」とは

個性が何らかの形で現われていればよいと言われています。高い芸術性があるとか、ほかには全くないほど独創的とかいうことまでは求めていません。つまり幼稚園でかいたお絵かきなども著作物になる可能性があります。

「表現したもの」とは

自分の中だけにとどまっているものは著作物ではありません。つまり表現しなければ著作物にはなりえません。歌う、書く、踊ってみせるというように他の人が見て五感で認識できるようになってはじめて著作物となります。自分の頭の中にだけあるアイデアは保護されません。

「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」とは

ずいぶん狭いように感じるかもしれません。例えば映画やプログラムなどはどうなのかと思われるかもしれません。しかし、ここでいう「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」とは知的文化的精神活動の結果うみだされたもの全般と理解しておいてください。というのも第十条に著作物が例示されており、その中には映画、プログラム、建築、地図、図面、写真等が含まれているからです。

これをまとめると、著作物とは「人間の精神活動の結果生み出されたもので、個性をもって、他人に伝わるように表現されたもの全般」といったところでしょうか。

著作権法第一条

さて次は第一条です、第一条では著作権法の目的について述べられています。

第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

著作物については二条一項のとおりです。

「これに隣接する権利」とは

レコードの原盤権という権利が存在します。レコーディングをするにはそれなりにお金がかかります。例えばスタジオ代などです。そしてレコードが売れることによってそういう費用が回収されていきます。つまり音源の製作にお金を出した人の権利です。こういう権利を原盤権というのですが、法律上は著作隣接権と呼びます。

レコード会社に加え放送事業者なども録音し音源化、撮影して映像化しますから著作隣接権をもっています。

また演奏するミュージシャン、演じる俳優には実演家権という名の著作隣接権が発生します。この著作隣接権については、著作権ともあいまって大変複雑なので別の機会に説明したいと思います。

「権利を定め」といっているので、著作権法では著作権と著作隣接権について詳細に定められています。

「文化的所産の公正な利用」とは

公正な利用のことをフェアユースという言い方をします。一定の要素が満たされるような公正な利用には著作者の権利が及ばないというものです。例えば「引用」、「教育的利用」などがそれにあたりますが、日本の著作権法では包括的に「公正な利用」を定義しているわけではなく、逆にこういう場合は著作権は及びませんよというように「公正な利用」に相当する行為を列挙しています。(著作権法30条)

「公正な利用」について判断するための4要素

  • 利用の目的と性格(利用が商業性を有するか、非営利の教育目的かという点も含む)
  • 著作権のある著作物の性質
  • 著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性
  • 著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響

著作者の権利の及ばない部分も一部あるんだけれども、著作者の権利を守っていこう、そしてそれによって文化が発展に役立てよう

というのがこの第一条で現されている著作権法の趣旨でしょうか。