著作権登録

著作権登録制度とは

あまり知られていませんが、著作権の登録制度というものがあります。

 

著作権は、創作した時点で自動的に発生します。これが自分の著作物だということを、何かの手段で公にする必要はありません。一方、いわゆる特許や登録商標といった工業所有権に属する権利は登録することによって権利が発生します。

つまり、著作権法上の登録制度というのは,権利を取得のためのものではないのです。また,登録をしたから著作権移転ができるわけでもなく、契約を交わせばそれだけで移転の効力は有効に生じます。

では,なぜ登録制度があるのでしょうか。

公示による安全性の確保

著作権が発生した、若しくは移転をしたという事実を公示することで、取引の安全性を確保することができます。登録した結果、一定の法律上の効果がうまれるます。その効果は登録の種類によって違います。

登録の種類

実名の登録

誰が登録するのか

作家や作曲家はペンネームを使われる方が多くいます。なかにはいくつもの名前をもっている方がいます。若い頃、別のペンネームを使っていたとか、作品のジャンルによって変えていることもあるとおもいます。

こういった方が自分の作品であるということを明確にするために、無名又は変名で公表された著作物を、実はこの作品は私が書いていますということを主張するために、実名を登録します。

効果その一(推定効)

反証がない限り登録されたかたの作品と推定されることになります。つまり登録によって著作者にもたらされるのはあくまで推定効です。実際の争いでは、立証資料を提出する必要がでてきます。

効果その二(著作権の寿命が延びる)

無名、変名で公表された作品の著作権は、発表後50年です。登録することにより、死後50年とすることができます。むしろこちらの効果が大きいと思います。

ポイント

本人の他に遺言書で指定された遺族も登録申請ができますから、相続においても意味のある手続といえます。

第一発行年月日等の登録(法第76条)

創作年月日の登録(法第76条の2)

誰が登録するのか

「第一発行年月日等の登録」にあっては、著作権者又は無名若しくは変名で公表された著作物の発行者が,「創作年月日の登録」にあってはプログラムの著作物の著作者が、最初に発行又は公表された年月日、創作された年月日の登録を登録します。

効果その一(推定効)

実名登録と同様、反証がない限り,登録されている日に当該著作物が第一発行又は第一公表されたもの、もしくは創作されたものと推定されます。この場合も、あくまで推定効です。実際の争いでは、立証資料を提出する必要がでてきます。

効果その二

この二つの登録においても、著作権がいつまで続くのか、つまり保護期間の起点を定めることできます。登録された日付が確定することで、50年の保護期間の起点が明確となります。

ポイント

著作者が法人の場合、この方法で著作権の起算日を明確にしておくことができます。法人著作物は譲渡されることも多く、会社自体の合併や分割で明確な日付がわからなくなることもありますから、この登録は意味があると思います。また、プログラムも譲渡を前提としていることも多いため、この登録があることでスムーズな譲渡が可能となります。

著作権・著作隣接権の移転等の登録(法第77条)

 

著作権若しくは著作隣接権の譲渡等,又は著作権若しくは著作隣接権を目的とする質権の設定等があった場合におこなう登録です。原則、登録権利者、登録義務者が共同申請をするのですが、権利者からの単独申請も認められます。

具体的には、以下の登録が可能です。

  1. 著作権、著作権隣接権の移転の登録
  2. 著作権、著作権隣接権を目的とする質権の設定
  3. 著作権若しくは当該質権の処分の制限の登録
  4. 著作権、著作権隣接権を目的とする質権の移転の登録
  5. 著作権、著作権隣接権の信託の登録

効果

権利の変動に関して,登録することにより第三者に対抗することができます。逆にいえば、登録しなければ第三者に対抗できません。つまり、二重譲渡があったときに、後から譲渡契約を結んだ方が登録をすると、先に譲渡を受けた未登録者は対抗できません。

ポイント

この登録は大きな効果をもたらします。財産権に直接及ぶ登録なので、譲渡の際には必ずやっておくべきです。著作権自体は、創作と同時に発生しますので、不動産のように事前に保存登記がなくても登録できます。

著作隣接権の登録という制度がありますが、実はほとんど利用されていません。しかし、レコーディング費用を誰かが支出したような場合、実演権の譲渡登録は効果があります。まだまだ制度利用の余地があると思います。

出版権の設定等の登録(法第88条)

著作権・著作隣接権の移転等の登録とよく似ていますが。出版権だけを目的とし、設定登録が可能であるところが違います。出版権の設定,移転等,又は出版権を目的とする質権の設定等があった場合,登録権利者及び登録義務者が登録申請をします。 原則として共同申請ですが,登録権利者の単独申請も可能です。

効果

権利の変動に関して,登録することにより第三者に対抗することができるのは、「著作権・著作隣接権の移転等の登録」と同じです。つまり、第三者に対抗するためには必要な登録です。

著作権登録の今後

個人がiBookやAmazonなどで、出版社を介さずに出版が可能になりました。こういう状況の中では、自分の権利を自分で守ることが必要になってくると思います。この制度が本当に意味をもつのはこれからかもしれません。

当事務所の対応

著作権登録自体を引き受けることもしますが、著作権がかかわる契約のお手伝い中で、効果的にこの登録を使えればと思っています。