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柔軟な著作権制限、著作権管理団体「反対」表明

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「柔軟な著作権制限」とはアメリカでフェアユース(公正利用)と言われる規定です。その制限の方法を日本に導入しょうということで、文化庁が検討をしているのですが、それに対し7つの団体が反対をしています。

フェアユースとは

フェアユース(公正な利用)とはなんでしょう。著作権を利用するにあたり、その利用が公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらないとする規定のことを言います。

4つの判断基準

アメリカの場合は、公正な利用判断するため4つの判断基準を設けています。

  • 利用の目的と性格
  • 著作権のある著作物の性質
  • 著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性
  • 著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響

利用の目的と性格

営利か非営利の教育利用かという基準。

著作権のある著作物の性質

単なるデータに近いものなのか、高度な芸術性をもつものなのかといった基準。

著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性

どれくらいの量を利用したのか、革新的な部分なのか、そうでないのかといった基準、

著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響

原著作権を利用した著作物が市場に出回ったとき、どの程度の影響を及ぼすのかといった基準。

これらの4つの基準を総合的に判断し、公正な利用にあたるとなれば、許諾をえなくて良いというのがこのフェアユースなのですが、当然のことながら、それは使う側の事情であって、反論にあうこともあるわけです。その場合も、この4つの判断基準に基づいて、裁判所は判断します。


何故、今フェアユースなのか?

日本の著作権法では、制限規定があります。制限規定とは「個人と家庭内の範囲で、個人として楽しむのであれば複製はして良い」(30条)といった規定です。それ以外には、引用(32条)、教科書への掲載(33条)などがあります。この基準は、かなり細かく例示されています。

一方、アメリカの著作権法には、この制限規定がありません。そのかわりにフェアユースという抽象的な判断基準を作り、使用者に判断をまかせています。一見日本のやりかたで良いような気がするのですが、そこには技術進歩についていけなくなってきているという事情があるのです。

よく例にだされるのがGoogleなどのサービスが蓄えている膨大な情報です。コンテンツを保存する行為は、複写を作る行為とかわりありません。検索されてはじめて利用されるとしても、企業による複製は著作権法違反。日本の場合は、47条8,9に制限規定をおくことで、この問題を解決しました。

しかし、アメリカであれば、「必要に応じて使えるようにするための行為はフェアユースにあたる」という判断をGoogleがすれば、いったんは保存が可能になります。もちろん、訴えられる可能性がないわけではありません。

技術革新により、新しいメディアやサービスが動きが始めたときに、法律の整備を待っていては、すぐに対応ができないわけです。ここで、日本型フェアユースの検討がはじまりました。

何故反対なのか?

それでは何故7団体は反対しているのでしょうか?この制度を利用すると、著作物の利用は容易になります。利用側が拡大解釈でフェアユースだと判断するケースが増えると、結果として著作権侵害が増え、著作者、著作権者の利益を損なうというのが基本的な考え方です。これはそのとおりだと思います。訴訟文化が日本とアメリカでは違うということもあるでしょう。

しかし、一方で国際競争においてスピーディーな対応ができるように法整備をするということも大事なことです。文化庁が知恵を振り絞ってくれるのを期待したいと思います。

反対している7団体

毎日新聞の記事によると以下の7団体です。

  • 日本新聞協会
  • 日本映画製作者連盟
  • 日本書籍出版協会
  • 日本音楽事業者協会
  • 日本雑誌協会
  • 日本民間放送連盟
  • 日本レコード協会

記事元(毎日新聞)


http://mainichi.jp/articles/20161025/k00/00m/040/105000c

PDF化による著作権法違反

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大手出版社で著作権法違反

入試の過去問で有名な旺文社という出版社があります。お世話になった方も多いと思います。私もお世話になりました。その旺文社が、入試の過去問をPDF保存していたことがわかり、データ破棄したと発表しました。旺文社は著作権そのもので商いをしている会社ですが、実は、一般企業にとっても重要な論点を含んでいると思いましたので、とりあげてみました。

<旺文社のプレス発表はこちら>
https://www.obunsha.co.jp/news/detail/425

発表によると、旺文社は各大学からその年の入試問題の提供を受けていました。紙に印刷された試験問題です。その際に、「紙の書籍、電子辞書・電子書籍、入試データの蓄積、公衆送信による通信指導」に利用する旨を説明して受領していました。

しかし、入試データの蓄積をするにあたり、経年劣化もあるためPDF化して保存するようにしたところ、この行為が、著作権法違反になる恐れがあるため破棄したというものです。PDF化というのはデジタル化ということですが、二つの論点から考えてみたいと思います。

何が違反だったのか?

複製するだけでだめ

ポイントは、
PDF化です。旺文社は、実際にデータを書籍などに利用する際には、著作者である学校の許諾をとっています。ただ単にPDFにしただけでは、学校側に損害が発生したとは考えにいくいので、問題を提供した学校の権利を侵害したとは思えません。ですから、ここで問題になるのは、紙をスキャニングして
PDFを作った行為自体です。

二次的著作物の可能性

オリジナルを改変して作られた別の作品を二次的著作物と呼びます。小説をテレビドラマ化したり、マンガからアニメを作ったりした場合があてはまります。今回のケースに近い例ででいえば、写真のデジタル化などが二次的著作物にあたります。


そうすると、紙で保存していた問題集をPDFというデジタル媒体に置き換えた時点で、二次的著作物にあたる可能性もあります。


二次的著作物を作成する権利、作成させない権利については、単に著作権譲渡をしただけでは、移転をしません。もし、そこが契約に盛り込まれていなければ、著作権法に抵触する可能性があります。

(翻訳権、翻案権等)

第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。


(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)

第二十八条  二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。




複製権

今回のデジタル化を広義の複製と考えた場合はどうでしょう。複製権または複製したものを頒布する権利は、著作者が
専有しています。つまり、他の人には複製する権利はありません。

(複製権)

第二十一条  著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

(頒布権)

第二十六条  著作者は、その映画の著作物をその複製物により頒布する権利を専有する。

2  著作者は、映画の著作物において複製されているその著作物を当該映画の著作物の複製物により頒布する権利を専有する。




私的利用という制限規定

ただし、制限規定という条文があり、私的使用に限って、一定の制限下でのコピーを認めています。

その昔、自分が買ったレコードから好きな曲だけをカセット・テープにコピーをするなどして楽しんだ方は多いと思います。また趣味でピアノを弾く方が、楽譜をコピーをして譜めくりをしなくて良いようにして使うなど、あくまで個人、もしくは家庭内の範囲における利用に限り認められています。

ちなみに、いわゆるプロテクトがかかっているDVDをはずしてファイルに取り込む行為は、私的利用であっても違法です。(著作権法30条2)

つまりデータを保存するというだけの目的であったとしても、企業がおこなった時点で著作権法に触れる可能性がります。

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。




どんな損害が発生したのか

実は、今回、損害は誰にも発生していないと思われます。旺文社は利用に関する許諾は得ていて、単に経年劣化への対応として複製しただけです。もともとが購入したものでもありませんし、複製をしたからといって、オリジナルが売れなくなるものでもありません。

また著作権というのは親告罪、つまり誰かが訴えなければ、罪に問われないのです。今回に関していえば、複製をするだけでは、誰も被害を被らないと思われます。損害がありませんから、訴えの利益がなく、親告罪も成立しない可能性がたかいです。

しかしそれでも、旺文社がこのような発表をしたのは、著作権という権利をもとにビジネスをしている出版社だからこそであったと思われます。

一般企業でもおこっている著作権法違反

著作権に関して認識の高い出版社であったため、このように少々大げさな発表がされましたが、多くの一般企業においては、たぶんここまでの認識はもっていないと思います。

何年もまえにカメラマンに依頼した古い写真をデジタル保存すると二次的著作物になります。カメラマンと二次的著作物にかかわる権利が譲渡されているかどうかの確認をする必要があります。

例えば社内で情報共有をするため、新聞記事をコピーして回覧する、ホームページを印刷して回覧するのも、複製権の侵害に該当します。

厳密にいうと、忘年会のため、食べログの紹介ページを印刷して配布するのも、個人、家庭の範囲を超えますから違法になりえます。

知らず知らずのうちに人の権利を奪っていることもありますから、コンプライアンスを遵守すべき企業としては、著作権にも気を配りたいところです。

琵琶湖博物館、図鑑を盗用

琵琶湖博物館がホームページで生物紹介をするにあたり、市販の図鑑を盗用していたことがわかったという報道がありました。
他の図鑑に記載されていた内容の転記が400件あったということです。

ブログを毎日にように書いている方はわかると思いますが、単に「ものを書く」という行為ですが、結構大変な作業です。10年で400件、1年で40件、10日に1件ですが、時には、新しい知識も入れなければならず、書き続けるのは大変な作業です。

文章の場合、難しいのですが、一般的にはリライトという方法があります。つまり、内容を文体等を書き直して利用するという手段で、よくネット上の文章ではおこなわれます。中身を理解していない人がやっつけ仕事をしていたりすると、結果として意味不明の文章になっていたりしますので、すぐわかります。

それでは、リライトすれば許されるのかという問題があります。残念ながら、リライトすれば良いというものでもありません。同一と判断されればやはり著作権法違反です。

文章の一つ一つのパーツがどうなっているかは大きな要素ですが、著作権が保護するのは「表現」であり全体としての表現が同じとみなされれば、やはり著作権法上問題になります。

少々禅問答のようになりますが、曖昧な権利ゆえに、取扱が難しいと思います。文章を書くときは、それなりの努力をして書くしかありません。むしろ結果として同じになったときは、著作権法に触れません。もっとも、そこを立証するのは大変ですが。

やはり難しい権利ですね。

ドイツの音楽著作権管理団体、ユーチューブと和解

2009年から契約が切れていた、ドイツの音楽管理団体GEMAとYou Tubeが和解したそうです。

GEMA
The Gesellschaft für musikalische Aufführungs- und mechanische Vervielfältigungsrechte (GEMA; English: Society for musical performing and mechanical reproduction rights)


You tube のビジネスモデルにあって、著作権料はサーバー費用と並んで、コストの多くを占めるはずです。
今回、どのような和解をしたのかはわかりませんが、ここが和解しないと、逆にプロモーション・ビデオなどから広告をとることもできず、大きな収益源を失いそうです。そういう意味では解決しなくてはならない問題だったと思われます。

記事元
http://www.afpbb.com/articles/-/3106494